金色のネコは海を泳ぐ
そう言って、ジュストがルミエール王国へ帰ったのは5月。

春風が優しく吹く海でお別れした。

ジュストは最後にもう1度キスをしてくれて、“印”もつけてくれたけれど……

「もう、待ちくたびれちゃうよ……」

ルーチェは診療所の壁に新しく飾られた自分のクラドールサーティフィケートを見上げて呟いた。

季節は巡り、ジュストと出会った冬も少し過ぎて、また春風が吹き始めようという頃。

ルーチェはめでたく1月に国家試験に合格。トラッタメントも猛特訓して、今までの成績不振が嘘のようにオールAで通った。元々得意だった筆記試験と薬の調合に至っては、その年の1番の成績で、家族は大喜び。

それも、ジュストとの約束のために努力したのだから……結局、最初から最後までジュストのおかげでクラドールになれたと言える。

診療所での勤務を始めたのはサーティフィケートの届いた2月。

とは言っても、ずっと研修で診察をしていたから仕事内容は慣れたもの。変わったことはブリジッタとグラートの監督がなくなったことくらいだ。

「はぁ……」

ルーチェがため息をついたとき、カタン、と階段から音がして思わず勢い良く振り返る。
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