金色のネコは海を泳ぐ
「何だ、アリーチェか……」
「何だとは何よ!」

ジュストだと思った――なんて、そんなわけないのに。

もう1度ため息をつくと、アリーチェは両手を挙げた。

「これがマリッジブルーってやつかしら?」

マリッジブルー?一体何を言い出すのかと思えば……ルーチェはまだ結婚の予定はない。

いや……いつかジュストが帰ってきて、婿になるということは、“結婚する”ということなのだけれど、いつになるかなんてわからない。

予定もないのにマリッジブルーに陥る女性などいるのだろうか?

「もう、違うわよ。それより暇なら片付けを手伝って」
「はいはい」

ルーチェは診察室を指差して、掃除用具入れの扉を開けた。アリーチェは元々そのつもりで降りてきたらしく、テキパキと手伝いを始めてくれた。
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