金色のネコは海を泳ぐ
アリーチェが手伝ってくれたおかげで片付けは早く終わり、診療所の鍵を閉めてリビングへと上がった。

階段を上がりながら、リビングが何やらいつもより賑やかだとルーチェは首を傾げる。

「お母さん、ちょっとうるさ――」

目が点、というのはこういうことなのだ。

「ルーチェ!お疲れ様。ご飯できてるよ?」
「あら、ルーチェ。ほら、早く座って。久しぶりにジュストくんの料理が食べられるわよ」

ご機嫌なブリジッタがサラダを皿に取り分けて、グラートはワインをグラスに注ぐ。

アリーチェは足の動かないルーチェのところへ来て「早く」と、背中を押した。

促されるままに、ルーチェはジュストの隣の席に座る。

「ルーチェ、グラタンもあるよ。はい、あーん」
「あーん?って……なんでジュストがいるのよ!?」

危うく差し出されたグラタンを食べそうになって、ルーチェはガタッと立ち上がった。

帰ってくるなんて、今日だなんて、聞いていない!

「なんでって、ジュストはお姉ちゃんの旦那様でしょ?」
「そうよ。ジュストくんはもう今日からジュスト・バラルディよ!」
「届けも出してきたからな」

アリーチェ、ブリジッタ、グラートの3段攻撃。追い討ちにニッコリ笑ったジュスト。

「ええぇぇぇっ!?」

この日、ルーチェの叫び声を聞かなかったご近所さんはいないとか――
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