金色のネコは海を泳ぐ
「うーん?よくわからない」
「はぁ?」

さっきから同じ“HA”という音しか出てこない。

ルーチェだって意味がわからない。

「クロヴィスに聞いたら、『手段を選んではいけません。人脈は大事ですよ』って言われた。エミリー姉様はタコみたいに赤くなって怒ってたけど」

それを思い出したのか、ジュストはプッと噴き出した。

「それで、僕はもうジュスト・バラルディになっちゃったから、王子様には戻れないんだよ」

「ね?」と首を傾げてみせるジュスト。

やはりルミエール王国の王子教育は間違っている。

しかし、1番間違っているのはクロヴィスというあの冷静過ぎる側近のようだ……

「ルーチェは僕が王子様じゃないと嫌だった?」
「そんなこと……ない、よ。ただ……驚いて。だって、ジュスト、何も言ってくれてないよ……」

尻すぼみにそう言って、恥ずかしくなって俯く。

ジュストが帰ってきて嬉しいし、事後報告だけど婿になってくれて……嫌なわけじゃない。

でも、ルーチェにだって憧れがあった。

恋人と楽しい時間を過ごして、プロポーズを受けて、結婚して――…
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