金色のネコは海を泳ぐ
「ただいまー」

ルーチェが玄関のドアを開けると、ふわりと良い香りが鼻をくすぐった。

今日は、ビーフシチューのようだ。

ジュストとルーチェが診療所の隣の家に住むようになってもう2ヶ月。

ルーチェは毎日この家から診療所に通っている。往復1分だが……

リビングは大きな窓があって日当たりも良く、休日はジュストと絨毯の上でゴロゴロして過ごす、なんてことも多い。

2階は3つベッドルームがあるけれど、使っているのは1つ。他の2つは書斎として使ったり、客室という形で整えてある。

1階のカフェもオープンし、主に診療所帰りの患者さんの憩いの場となっている。それに次いで多いのは、今やこの町のアイドルとなったジュスト目当ての女の子、とか……

聞けば、お城でシェフにデザート作りの修行をつけてもらったとかで、元々器用だったジュストの店の評判も上々。

コーヒーや紅茶の種類も豊富に揃え、ケーキは毎日違うものがショーケースに並ぶ。ランチも日替わり――つまり、ジュストの気分――でメニューが異なる。

そして、普段の料理も専らジュストの担当になっている。

家事は分担しているが、ジュストが済ませてくれていることも多い。

……なんて素晴らしい婿なのだ。
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