金色のネコは海を泳ぐ
――翌朝、「休日の朝食は皆で食べましょう」というブリジッタの提案で隣の実家にやってきたジュストとルーチェ。

和やかに進んでいたはずの席で、突然ジュストは切り出した。

「あのね、僕、昨日ルーチェを食べたんだ!ルーチェはね、痛くて泣いたけど、でもいっぱい好きって言ってくれて――痛っ」
「バカジュスト!そんな報告はしなくていいの!」

ありえない報告を始めたジュストの頭をルーチェは思いきり叩いた。

案の定、グラートはフォークを落とし、アリーチェはニヤニヤとした表情を隠すこともなく2人を見た。

ブリジッタに至っては、キャーッといきなり立ち上がったかと思うと、やはり「複雑だわ」と、とても複雑そうには見えない表情でぐるぐるテーブルの周りを歩いている。

「孫ができるのもすぐかしら?嫌だ、私“おばあちゃん”になっちゃうの?あぁ、でもきっと可愛いわね。ねぇ、グラート、男の子と女の子、どっちが欲しい?」

もう、突っ込みどころが多すぎて何と声を掛けたらいいかよくわからない。

ルーチェは大きくため息をついてからコーヒーを飲み干した。

「ルーチェ、大丈夫?あ、ほら、苺あるよ。あーんして?」

そしてどこまでもマイペースなルーチェの婿は、ニコニコと苺をつまんでルーチェの口元へと差し出してくる。

「もう、婿修行し直しだからね!」

とりあえず、夫婦の秘密を守れるオトコになってもらうのが先決のようだ。

ルーチェはこれからジュストに教え込むことのリストを頭で作成しながら、苺にパクリとかぶりついたのだった。
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