金色のネコは海を泳ぐ
「はぁぁぁぁ」

大きなため息をついて、首をガックリと前に倒す。

ずっと上を向いていたせいで、気持ちが悪い。ちなみにこれも12回目。

家に帰りたくなくてこうして海岸に来たけれど、いつもの時間に帰らないことは、自らまた試験に落ちたのだと報告しているようなものだ。

父も母も、別に試験に落ちたからといって怒るような人たちではない。ただ、さすがに5回目を超えた頃からはルーチェ自身が肩身の狭い思いを抱いているというか……

諦めた方がいいのだろうか。

ここまで試験に落ち続けるのは、ルーチェに人の命を預けることは出来ないという神様の思し召しかもしれないし。

診療所は出来の良い妹が継げばいい。最終手段はルーチェが婿に来てくれるクラドールと結婚すればいいわけで。

引っ込んだはずの涙がまた溢れそうになって、ルーチェは上を向いて瞬きをしてそれを散らした。

どうして、うまく行かないのだろう。

父も母も、祖父母だって……バラルディ家はずっとクラドール業を営んできた。その家に生まれて、幼い頃から1番近くで彼らの仕事も見てきた。それなのに、どうして自分はクラドールとしての1番最初の関門である卒業試験を通ることすらできないのか。
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