金色のネコは海を泳ぐ
季節はまだそう呼ぶには少し早いけれど、春らしく優しい風の入ってくる診察室。
太陽の光で暖かなその部屋で、1人、汗だくの娘が――
「ねぇ、お姉ちゃん……まだ?」
「も、ちょ……っと」
男の子の足にできた湿疹に呪文を施しながら、ルーチェはなんとか言葉を出した。
正直、話しかけないで欲しいと思う。こっちはチャクラの波長を弱く入れるのに、相当神経を使っているのだから。
「さっきもそう言ったじゃん!それに、赤いブツブツ、全然治らないし!」
男の子は口を尖らせて文句を言う。
だが、実際はその通りで……湿疹は全くその姿を消そうとはしない。普通、1分もかからずに治る症状だ。ところが、ルーチェはもう5分もトラッタメントを施している。
「ルーチェ、もういいから代わりなさい」
「うん……」
ルーチェの隣で様子を見ていた父、グラートが苦笑いでトラッタメントを代わった。
男の子が瞬きの間に解放され、母親と一緒に笑顔で帰っていくのを見送って、ルーチェはため息をつきながら椅子に倒れこんだ。
「クラクラする……」
「そりゃ、朝から全部のトラッタメントを普通の5倍かけてやっているからなぁ。今日はもういいぞ?」
グラートが男の子のカルテを書きながら言い、ルーチェは「うん」と力なく返事をしてふらふらしながら診察室を出た。
太陽の光で暖かなその部屋で、1人、汗だくの娘が――
「ねぇ、お姉ちゃん……まだ?」
「も、ちょ……っと」
男の子の足にできた湿疹に呪文を施しながら、ルーチェはなんとか言葉を出した。
正直、話しかけないで欲しいと思う。こっちはチャクラの波長を弱く入れるのに、相当神経を使っているのだから。
「さっきもそう言ったじゃん!それに、赤いブツブツ、全然治らないし!」
男の子は口を尖らせて文句を言う。
だが、実際はその通りで……湿疹は全くその姿を消そうとはしない。普通、1分もかからずに治る症状だ。ところが、ルーチェはもう5分もトラッタメントを施している。
「ルーチェ、もういいから代わりなさい」
「うん……」
ルーチェの隣で様子を見ていた父、グラートが苦笑いでトラッタメントを代わった。
男の子が瞬きの間に解放され、母親と一緒に笑顔で帰っていくのを見送って、ルーチェはため息をつきながら椅子に倒れこんだ。
「クラクラする……」
「そりゃ、朝から全部のトラッタメントを普通の5倍かけてやっているからなぁ。今日はもういいぞ?」
グラートが男の子のカルテを書きながら言い、ルーチェは「うん」と力なく返事をしてふらふらしながら診察室を出た。