金色のネコは海を泳ぐ
クラクラする頭をどうにか持ち上げながら階段に辿り着くと、1段目にオロが座っていた。真っ直ぐに歩けないルーチェを見て琥珀色の瞳に呆れた色が映る。

「そんな目で見ないでよ」

ルーチェは弱々しい声を出した。

「にゃぁ」

だが、オロは憐れむような声で鳴いてサッサと階段を上がっていってしまった。ルーチェもその後をゆっくりとついていく。

自室のある3階まで上るのもつらい――それは、ルーチェが未だにチャクラをうまく練れないせい。チャクラは精神力のようなもの。使い過ぎると体力も奪われるし、かなり疲れる。

オロと海を漂ってから1週間。研修室に籠もって猛特訓をし、チャクラの波長を弱く練り、トラッタメントの痛みを軽減することには成功した。

ところが今度は教科書にあった“色を濃く”という部分が抜け落ちてしまったようで。チャクラの濃度は力の強さの目安だ。強い効果を出したい場合は濃いチャクラを練らなければならない。

濃いチャクラを弱い波長で放出するのは難しい。逆に、濃いチャクラと強い波長は簡単だ。

クラドールに水属性が多いのは、そういったチャクラの調整が比較的やりやすいからだと言われている。

光属性や炎属性は波長の強さの平均が高めで刺激が強く、トラッタメントには向かない。ちなみに隣国であるヴィエント王国の民は風属性を操り、マーレほどではないがクラドールになる者も多い。

水属性と風属性は波長の幅も広く、王家専属クラドールレベルになると、最大限に濃くしたチャクラを最小限の波長で扱うことができるらしい――つまり、全くと言ってもいいほど痛みはなく、それでいて傷や病は完璧に素早く治せるのだ。
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