金色のネコは海を泳ぐ
「ん、あれ?君……」

若い男性の声に、ルーチェはオロを抱いたままそちらへ身体を向けた。

「え……」

思わず声を出してしまった。

そこに立っていたのは、ちょっと長めの茶色のくるっとした髪の背の高い男性だった。少し異国風の顔立ちをしているので、ハーフか、移民か……なのだろうか。

だが、1番ルーチェの目をひいたのは琥珀色の大きな瞳だった。オロにとてもよく似た色だったから驚いた。

オロが人間だったら、こんな感じなのかもしれないと思って。

「そのネコ、君が飼ってるの?」
「え、あ……はい」

じっと見つめてしまって、失礼だったかもしれない。パッと目を逸らしてオロを見ると、オロもその男性を真剣に見つめていた。

「オロ?」

先ほどまであんなに騒いでいたのに、どうしたのだろうか。

「なるほどね。ねぇ、僕がその子を見ててあげよっか?」
「え、でも……」

ルーチェが戸惑っていると、オロは身体を捩ってルーチェの腕から抜け出した。地面に飛び降りて男性の足元に擦り寄っていく。

ルーチェは首を傾げた。だが、とりあえずオロは大人しく外で待つことに納得したようで……気が変わらないうちに用事を済ませてしまおうと思い直す。

「あの、じゃあ……よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げて、ルーチェは図書館へと入った。
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