金色のネコは海を泳ぐ
今日は少し景色が違うようだ。

空との境界線が曖昧なほど澄んだ色の海に、金色の……小さな丸いものが浮かんでいる。

いや、泳いで――?

ルーチェは波に乗って海岸へと近づいてくるそれを、じっと見つめた。それが、歩き始めて……

「ねこ?」

思わず声に出して呟くと、そのネコはピタリと歩みを止めた。

まるで時が止まったかのように、2人――1人と1匹――は見つめ合う。波の静かな音だけが耳に届いて、潮風がルーチェの長いストレートの髪をはためかせた。

すると、ネコが突然身体をぶるぶるっと振って毛の水を散らした。

「きゃっ」

驚いて悲鳴を上げると、ネコは「にゃぁ」と鳴いてルーチェに近づいてきた。

ルーチェの足に頬を摺り寄せて、喉をゴロゴロと鳴らすネコ。どうやらルーチェは気に入られたらしい。

「ねぇ、海から来た……よね?」

砂浜に膝をついて濡れた毛を撫でてやる。首輪はしていないから、飼い猫ではないのだろう。

「にゃー」

ネコはまた鳴いて、ルーチェの膝に前足を乗せてきた。

「……一緒に来る?」
「にゃー」

ルーチェはそれを、肯定と受け取った――
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