金色のネコは海を泳ぐ
その日の夜。

「ねぇ、お母さん。妊娠してすぐに赤ちゃんの性別なんてわかるの?」
「え――」

ポロッと、グラートとブリジッタの手からフォークが滑り落ち、床とのアンサンブルを奏でた。

「おい、ルーチェ。お前――」
「あ、貴女まさか――」
「ん?」

真っ青になった両親を見て、ルーチェは首を傾げた。何か変なことを聞いただろうか?

「そんなわけないじゃん。この年で彼氏だっていないのに、子供ができるようなこ――イタッ」

ルーチェは失礼なことをペラペラと喋るアリーチェの足をテーブルの下で思いきり蹴った。

確かにルーチェはもう二十歳になったけれど、男っ気は全くない。養成学校時代は自分の出来の悪さに愕然として、恋どころではなかったし、皆クラドールを目指して必死に勉強するのだ。そんな浮ついた話はなかった……と、思う。

「……鈍感で凶暴じゃ貰い手がいるか心配だよ」
「大きなお世話よ!」

なぜ妹に結婚の心配をされなければならないのか。

「もう、そうじゃなくて!今日、図書館で会った人が出産関係の本を持ってて少し話をしたんだけど、最近妊娠がわかったって言ってたのに“女の子”って言ったの。あ、男の子もって言ってたから双子ってことかも」

そう言うと、グラートとブリジッタは大きく息を吐いてフォークを拾った。ブリジッタはそれらをキッチンで洗ってすぐに食卓に戻ってくる。
< 53 / 268 >

この作品をシェア

pagetop