金色のネコは海を泳ぐ
「うーん。まぁ、母親だとなんとなくわかることもあるかしら。自分の中にいる命だからやっぱり繋がっているのね」

だが、ブリジッタはルーチェのときもアリーチェのときも、ある程度の身体ができてからでないとわからなかったらしい。

「力の強い子だと、母親とコミュニケーションを取れることがあるらしいぞ?それでわかる場合もあるな」
「そうなの?」

それは初耳だ。グラートは水を一口飲んでから続きを話す。

「ほら、隣町のクラッソ診療所の息子……」
「ディーノお兄ちゃん?」

クラッソ家もバラルディ家のように代々診療所を営み、隣町ということもあって事故などで患者さんが多いと手伝いに行くことがある。

長男のディーノは特に優秀で、ヴィエント王国で王家専属クラドールをしているのだ。ルーチェも小さい頃は遊んでもらったこともある。

「あぁ、少し前に生まれた王子はリア様のお腹にいるときから風になって出てきていたって言っていたな」

ルーチェは初めて聞く話にただ驚くばかりだ。アリーチェも「へぇ」と感嘆の声を上げる。

お隣のヴィエント王国は、マーレ王国と昔から親交が深く良い関係を築いている。今のヴィエントの国王レオの妃はマーレ出身のリアという女性で、彼女はとても優秀なクラドール――王妃になる前は王家専属クラドールだった――なのだ。

両親がヴィエント王家専属クラドールとして抜擢され、幼い頃からヴィエント城で暮らしていたリアをレオが見初めたという憧れのロイヤルウェディングである。

結婚式にはマーレ国民も多く参加したらしいが、ルーチェは卒業試験に落ち続けていた時期で……その機会を逃した。両親もアリーチェもルーチェが行かないのなら、と気を遣ってくれたため、バラルディ家は誰一人として結婚式に参加できなかったのだ。
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