金色のネコは海を泳ぐ
「まぁでも、うちに来る妊婦さんでそんな人はいないなぁ」

グラートはそう言って、残りのパスタを一気に食べてしまった。

「そこまで力のある子っていうと、王家の子くらいじゃないのかしらね?」
「王家の……?」

ルーチェは「うーん」と唸って昼間の男性を思い浮かべた。茶色いくせっ毛で大きな琥珀色の瞳のちょっと軽そうな人だった。

オロと会話のできる少し不思議な人ではあったけれど、王家の人には……見えなかったと思う。いや、そもそもマーレ王国の王子であればルーチェも写真くらい見たことがある。それに、王子はこんな辺鄙なところの図書館になど来ないだろう。

「にゃうー」
「ほら、オロが退屈してるわよ。早く食べて遊んであげなさいな」

ルーチェの足元に擦り寄ってくるオロは可愛く鳴いているが……毎日、夕食後にルーチェを待っているのはオロのスパルタレッスンなのだ。

ルーチェは可愛い子ぶるオロをじろりと睨みつけ、パスタを口に入れた。

まったく、調子がいいのだから!
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