金色のネコは海を泳ぐ
じりじりと張り詰めた空気がルーチェの部屋に充満する。

ベッドの上でにらみ合うルーチェとオロ。

ルーチェはオロの琥珀色の瞳から目を逸らさないままゆっくりと下腹部を意識してチャクラを練っていた。

「にゃうん!」
「ぁいっ!?」

バシッと、オロの尻尾パンチが飛んでくる。そんなネコの尻尾ごときと思うかもしれないが、これが結構痛いのだ。それは、オロがチャクラを使っているせいで電流が流れるから。

「もう……」

また不合格の烙印を押されてしまった。

ルーチェが手に持ったボールに視線を落とす。確かにルーチェから見ても合格点には遠い。ボールは確かに青くなっているが、もっとダークブルーにならないと呪文治療に使えるほどではない。

今でもルーチェはトラッタメントの研修をさせてもらっている。だが、ルーチェの呪文治療は通常の2倍ほどの時間がかかる。

5倍かかっていた頃に比べたら成長したけれど、すべてのトラッタメントに2倍の時間と労力を使うということは、本来ならば2倍の患者さんを診ることができるということ。その無駄を省けなければ国家試験には通らないだろう。

「にゃっ、にゃっ!」
「はーい」

もう1度、ルーチェは体勢を整えて机の上に戻ったオロとにらめっこをする。
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