金色のネコは海を泳ぐ
「うぅぅん……」

ルーチェは頭を抱えて唸り、机に突っ伏した。

「にゃう?」
「ん、オロ、くすぐったい」

机にひょいっと乗っかって、ルーチェの顔を舐めるオロ――昨日海で拾ったネコ――を持ち上げて膝の上に乗せた。

「にゃぁ」

不満そうな声を上げるのは、名前が気に入らないのか、顔を舐めていたかったのか……

昨日、家に帰ったルーチェは潮水まみれだったオロをお風呂に入れ、毛を乾かしてやった。オロは両親の許可もすんなりと下り、ルーチェが面倒を見るという約束で飼うことになった。

ネコを抱いて帰ってきたルーチェがいつもより元気だったことに、両親は安心したように笑って「次がある」と言ってくれた。

ちなみに“オロ”とは、ルーチェが金色に見えた毛にちなんでつけた名前。

実際のオロの毛は明るめの茶色だが、光の加減で輝いて見えるようだ。

「オロ、診療所には入ってきちゃダメだよ?患者さんの中にはネコが苦手な人もいるかもしれないんだから」
「にゃぁ」

やはり低めの声を出して、ルーチェの手をバシッと叩くオロは、名前が気に入らないらしい。だが、名前がないと不便であるし……

「じゃあ、ネコさん?」
「にゃあぁぁ」

オロは一際大きな声で鳴いて、ルーチェの膝から降りてしまった。そして、床に散らばっていた木綿の布をひとつずつ銜えてゴミ箱に捨てていく。
< 6 / 268 >

この作品をシェア

pagetop