金色のネコは海を泳ぐ
ベッドにもぐりこんで、オロの背中を撫でる。

特に変わった様子はない。呼吸も規則正しいし、外見もいつも通り。

あの輝きは何だったのだろう?

「ねぇ、オロ……貴方は私の言葉がわかるのに、どうして私には貴方の言葉がわからないの?」

図書館で会った男性にだってわかっていたようだったのに。それとも、あの人が特別であっただけなのだろうか。

ルーチェはオロに寄り添いながら、今までの出来事を思い出していく。

卒業試験に受からなくて落ち込んでいたときに泳いできたオロ。

賢くて少しイジワルな、不思議な金色のネコ。

身を以って習得した呪文に、波に揺られて掴んだチャクラの練り方。それから濃度調整も、オロが見つけたボールのおかげで少しずつ形になってきて。

オロのおかげで、ルーチェはクラドールへの道を確実に進んでいるように思う。

「光の国のネコ、か……」

ルミエール王国のネコは輝くものだったりするのかも。

「そんなわけないよね……」

自分の考えを自分で否定して、ルーチェはため息をついた。輝くネコがいるなどという話になれば、当然話題になるだろう。観光の名物にもなるだろうし。

「ルミエール?」

ルーチェはハッとして机の上に置きっぱなしだったファイルを掴んだ。今朝、図書館から借りてきたものだ。
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