金色のネコは海を泳ぐ
――キィっと微かにドアが開く音にルーチェは振り返った。

かなり集中してしまっていたらしく、時計を見るととっくにお昼の時間を過ぎている。

「にゃぁん」
「オロ!って、ぎゃあああ!」

可愛らしい鳴き声と共に部屋に入ってきたオロを見て、ルーチェは慌ててオロを抱き上げた。オロはゴロゴロと喉を鳴らしてルーチェにピッタリとくっつく。

「にゃ、にゃっ」
「ちょ、ちょっとそんなに擦り付けないで!」

ルーチェは胸に擦り寄ってくるオロを掴んだまま腕を出来る限り伸ばして遠ざける。

オロが真っ黒になっていたからだ。毛を染めたらしい。

――そうではなく。

「あぁ……もう、なんでこんなに汚れてるの?」

ルーチェは嫌な予感に襲われながらドアを開けた。案の定、廊下にはネコの足跡が床にプリントされていて、階段からリビングへ、おそらく玄関まで続いているだろう。

「にゃー」
「何してきたのよ?」

毛が汚れているのもそうだけれど、なんだかボロボロに見える。朝いなくなって帰ってきたらこんなに泥だらけで。

「とにかくお風呂に入らなきゃ」

ルーチェはオロを抱いたまま部屋を出てお風呂場へと向かった。
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