金色のネコは海を泳ぐ
それから1週間。

オロは毎日のように泥だらけで帰ってきた。初日にルーチェに注意されてから玄関の前で鳴いて迎えを待つようにはなったのだけれど、一体何をしてこんなことになるのかが謎だ。

ルーチェは毎日オロをお風呂に入れ、オロは更にルーチェに甘えるようになって。

そしてルーチェは少年の夢を見続けている。

眠れていないわけではない。むしろ、ぐっすり眠れているのに夢を見る。いや……夢を見ているということは眠りが浅いということのはずなのだけれど、不思議とスッキリ目が覚める。

もっと不思議なのは、声がだんだんとハッキリしてきていることだ。今はもう、ルーチェを呼ぶのは彼だと確信している。

だが、なぜ……?

ルーチェは彼を知らない。

ならば、少年がルーチェを呼ぶのはルーチェの願望?それとも、古い迷信のような――少年がルーチェを想っているから夢に出てくるとか。

「……なわけないよね」

はぁっとため息をついて、ルーチェは調合していた薬の火を止めた。

ブリジッタやグラートに、最近変な夢を見ると話したこともある。しかし返ってくるのは「疲れているんじゃないか」というような言葉ばかり。

確かに、オロが光ったとか呪文を使えるとか、知らない少年が夢の中でルーチェを呼ぶとか……ルーチェ自身、変だと思う。でも事実なのだ。

ルーチェが自分の目で見て、耳で聞いて。すべてが現実なのに。
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