金色のネコは海を泳ぐ
「おーねーえーちゃーん!うるさいっ!」

バンッと勢い良くドアが開いてアリーチェが鬼の形相で部屋に入ってくる。ルーチェは「ヒッ」と声にならない悲鳴をあげた。

「まだ6時にもなってないのに何やってんの!近所迷惑でしょ!」

怒鳴るアリーチェをなだめるために一応「ごめんね」と平謝りしたものの、近所迷惑はアリーチェの方だとルーチェは思った。

「にゃうん」
「あぁ、オロも大変だね。お姉ちゃんてば、最近おかしいよね?あ、でも叫び方はちょっと女の子らしくなったかもね」

そんなことはどうでもいい!

「にゃー」
「あ、オロもそう思う?いい子だねぇ」

アリーチェは足元にやってきたジュストを撫でて、ジュストはゴロゴロと喉を鳴らした。ルーチェ以外に話しかけるつもりはないらしい。

「小悪魔ネコ……」

ボソッと呟いたらジュストはチラリと琥珀色の瞳をルーチェに向けて目を細めた。“小”はいらないかもしれない。ルーチェはそんな風に考えて頬を引き攣らせた。

「じゃ、静かにしてよね。あと1時間は寝られるっていうのに」

アリーチェはブツブツと文句を言いながら部屋を出て行った。

ルーチェははぁっとため息をついてベッドに戻る。
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