晴れのち雨
preparation
高校2年生になって10ヶ月が過ぎ
私は受験生になろうとしていた。
「嫌だなぁ...受験。」
「アオー!!」
自分の教室の窓から
グランドを眺めていた私に
友達である日向 結衣(ヒュウガ ユイ)が
テニスコートから1年生に混じって
私の名前を呼んで手を振っている。
少し恥ずかしくも感じながら
彼女に手を振りかえした
私の名前は保坂 葵(ホサカ アオイ)。
彼女は高校に入学してから
ずっとクラスは同じで
出席番号も前後である。
「ふふっ..犬みたい...。」
そう呟いて
テニスを始める彼女を見ていたら
「失礼な奴だなぁ。」
と大好きな香りを纏った彼が後ろにいた。
「なんだ..来てたんだ。」
チラッと彼を見て
結衣に視線を戻した私に
「こらっ。彼氏に対しても失礼だぞ。」
とコツンと頭を叩き、私の隣に立った。
「シュウは今日もコーチで来てたの?」
私の彼氏である
森田 秀斗(モリタ シュウト)は
2つ年上の先輩で
卒業してからはOB&部活のコーチとしてたまに学校に来ている。
「葵に会いにきたの。」
そう言って笑うシュウの笑顔に
心がふわっとする。
「嘘つき。」
と紅く染まったかもしれない顔を
隠すように俯いた。
「一緒に帰ろう??」
彼が私の顔を覗きこむ
「うん。」
机に散らかった文房具を片付けて
誰もいない教室を後にした。
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