晴れのち雨
ドサッー
私の上に先生が覆いかぶさる。
「葵ー」
初めてそう呼ばれた。
「智裕ー」
私も今一番、愛しい人の名前を呼んだ。
それを合図に二人の壁が無くなった。
ふっと先生が小さく笑った。
陰って先生の顔は見えなかったけれど
どんな顔をしているのか分かった。
先生に出逢った時と違って、私はもう先生の笑顔を知っているから。
スローモーションで先生の顔が近づく。
私は目を閉じて待った。
好きな人の口づけを待つのがこんなにも待ち遠しく思ったのは初めてだった。
唇が触れたー
今までで一番近い距離で見つめ合う。
先生以外何も見えない。
ぶわっと心の中で何かが込み上げる。
先生に触れたい。
先生に触れられたい。
貴方でいっぱいにして欲しい。
貴方を私でいっぱいにしたい。
嗚呼ー
私、欲情しているんだ。
初めての感情は不思議と心地良く感じた。