晴れのち雨
regret
ふわりと何も見えなくなった。
意識を失った訳じゃない。
途切れ途切れにまだ息をしていた。
誰かに目隠しをされているんだ。
「無理して見んで良いねんで?」
抱きしめて欲しい人が
後ろから両手で私の目を押さえていた。
「辛いことなら見んで良い。
泣きたかったら泣いていい。
俺が隠したるから。」
「せ...せんせ?」
絶え絶えに先生を呼ぶ。
先生は仏壇に背中を向けるように、私を振り返らせると抱きしめた。
「葵、俺に合わせて呼吸してな」
吸って...吐く....
吸って...吐く...
ゆっくりと深呼吸を繰り返した。
そうだ。
呼吸ってこうやってするんだ。
酸素を得られたおかげでクリアになった頭で、自分が過呼吸になりかけていたことに気づく。
抱きしめていた力を弱めて、
「大丈夫か?」
と私の顔を覗きながら問う。
「うん。」
ありがとう、とお礼も言いたかったが、先に謝ることが多すぎて言葉を呑んでしまった。