晴れのち雨
『もうちょっと待っててくれても良いんちゃう?』
電話から一番聞きたかった声が聞こえる。
「嘘...」
一気に我慢していた涙が落ちた。
『髪、切ってんな〜良く似合ってんで』
「先生!!どこにいるんですか?」
辺りを見回しても人も居なければ、車も一台もなかった。
『ははっ!焦りすぎ。
じっくり葵がきた道、見てみ?」
塾からこのビルに続く道であり、そして先生が煙草を吸っていた路地裏でもある道を見た。
暗くてよく見えないけれど、
人影が一つ。
気づいた時には走り出していて、
相変わらず廃れたスーツを着た先生に抱きしめられていた。
「ただいま」
私を抱きしめたまま先生が耳元で言う。
「おかえり」
スッと先生の胸に手を添えて、顔をあげると目を細めた先生がいた。
5年の間に先生は少し老けたせいか、
笑うと目元にシワが出来ていた。
凍えた恋心を溶かすのも
壊れかけた恋心を修復するのも
先生しかいなかったー