晴れのち雨

decision



「...してるよ。」


そうはっきりと聞こえたはずなのに

「結婚されているんですか?」

もう一度尋ねてしまう。


「うん。」


先生の答えが聞こえる。



その答えを想像しなかった訳じゃない
だけど、何処かで自分の求める答えを期待してた。


「そうなんだ。皆に教えてこよーっと」


溜まった涙が零れないうちに
先生に背中を見せて来た方に歩き出すと


「待って!!」


その声に立ち止まる。


「アオちゃん泣いてる??」

絶対に見えなかったはずの涙。
どうして気づいてしまうんだろう。

傘で隠しながら、服の袖で涙を拭く。


「泣いてないです。泣くポイントどこにもなかったですよ?先生。」


振り返って笑顔で答えた。


「やんな〜 ごめん。」


煙草を持っていた手で頭を掻く先生。


「きっと...顔に掛かった雨と見間違えたんじゃないんですか。」


そう言って、もう一度先生に背中を見せようとした私に


「なら良かったわ〜
俺、アオちゃんの笑顔好きやし」



なんてズルい人なんだろう...
私の方が先に好きになったのに...
私が言いたくても言えない言葉を軽々と言ってしまう。


「先生、さようなら。」


雨の中歩き出した私。

遠くの方で「風邪ひかんようにな」
と先生の声が聞こえた気がした。


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