晴れのち雨
「んじゃ、イブにお願いします。」
「了解。でも、ホンマにいいの??」
私の顔を覗き込む。
以前もこんなことがあったが、あまりの顔を近さに身体の体温が一気に上がる。
「はい。先生が良いんです。」
至近距離で見つめながら答えた。
「分かった。でもその日だけやで。
あくまでも講師と生徒。
一線を越えるのはそのときだけ。
アオちゃんにはもっといい人が待ってんねんから、俺のことは忘れや。」
講師と生徒...心の中で呟く。
それ以上の関係ではない、と釘をさされたようで少し哀しかったけれど、私が望んで選んだことだから仕方ない。
「先生も心配しないで下さい。
私が貴方を想うのはその日までです。
その日を過ぎたら忘れますよ。
だって、サンタさんに新しい恋を届けて貰うんだから...!」
精一杯の強がりだった。
私は先生のことが好きだけど、それは一方的な恋心だから悔しく感じた。
ニヤッと笑い背筋を正すと
「そやな。後で、アオちゃんに手を出されたって訴えられたらどないしよ〜」
と、冗談を一つ。
少しずつだが、先生から悲しみが薄れて行くのが伝わる。
「ふふっ。そう思えるくらいいい人を見つけますね。」
ポケットから煙草を出しながら
「24日の午後5時から1時間だけ、此処で待ってる。やっぱりアホな約束したわと思ったら来んくて良いで。あと危ないし早よ来たらアカンで。」
と言って、煙草を吸った。
その姿を遠くに感じながら
「わかりました。必ず行きます。」
とだけ答えて、頭を下げると
雨の世界に自分を隠した。
少しの不安と恥ずかしさと恋心を共にー