パパ、もう一度ほめて
*1
「あや、志望校決まった?」
中学生三年生の夏。
蒸し暑い中、高校のパンフレットを見ながら、帰り道を親友のななとともに歩いていた。
「んー、一応行きたい高校はある!」
そう言って、親友のななの顔を見た。
「え、まじ、どこどこ?」
「私立高校なんだけどね、芸術が学べるの」
手元にあったパンフレットをななに見せる。
「学費高そうーー」
「…そこが悩みなのです。」
と真顔で言ってみたらおかしくって、笑えた。
「じゃ、また明日ー」
お互い、ひらひらと手を振って別れた。
夏休みには高校見学会がある。
それぞれ興味のある高校へ、見学に行くのだ。
私は都会の私立高校と、市内の公立高校へ行く予定だ。
「ただいまー」
「おかえり」
ご飯の匂いがして、幸せな気分になりながら家入った。
冷房が効いており、部屋は涼しかった。
すでにお母さんはご飯の支度をしていた。
「高校見学、私立のほう遠いし、パパにもついて行ってもらう?」
エプロンで手を吹きながらお母さんが言った。
「もし志望校そこにするんだったら、パパにも雰囲気とか知っといてもらわなきゃね。」
とお母さんがカレンダーを見ながらそう言った。
「見学、日曜日だったと思うし、パパに聞いてみよーぜ!」