Firstly
自室へ戻れば、今度は寛ぐ間もなく、シュリアナの唯一の侍女であるマイサがやってくる。

「無事、ですか。」

婚姻の誓いから先ほどの父とのやり取りを唯一見ていた彼女の視線が痛い。

それを無視して暑苦しい衣装を脱ぎ捨て、ベトベト塗られた髪や化粧をとりに浴室へ入った。


しかし、たった１人しかいない侍女のため、浴室でも寛ぐためにだらしなく座ったソファーでもマイサはもの言いたげにしていた。

そして呟かれた一言。

わかってますよ！
あーごめんなさい！！

心の中では完全に白旗をあげていたシュリアナだったが、ここで認めると厄介な事になりそうで聞こえなかったフリをする。

常日頃から淑女らしくない主に、マイサには言いたい事は山ほどあるのだ。

なんでこうなったかなあ。

溜め息ついて考えてみるが、家の事情が関わっているだけに、それさえ面倒くさくなってくる。

「あ！こんな時間？ヨディ爺ちゃんのお手伝いしなきゃ。」

最近、腰が痛いらしいのよねー。

独り言のようにつぶやきながら、自室を出る。

ヨディ爺さんは、たった１人の庭師なのだ。

小さな頃から爺さんの手伝いをしているシュリアナには、いい逃げ場所にもなっていた。

怒られないように、淑やかに階段を下りると足早に裏口から庭へと飛び出した。


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