大人の関係
「おう。どうした?春美ちゃんがまだいるぞ??」
「森本さん。お疲れ様です」
ちょうど営業から帰ってきたようだ。

「緑川製造さんから問い合わせで・・・。なんかややこしいんですよ~」
「緑川さんか。あそこは細かいからね。俺が引き受けるから、春美ちゃん帰りなよ」
皆が春美を心配している。

「小松さんがもうあと20分くらいで帰ってくるみたいなんで、小松さんに引き継いで帰りますよ。技術部からの連絡ももう来ると思うし」
緑川製造の担当は小松だ。
やはり担当者が受け取るのが一番。

「無理はするなよ~」
「ちょうど、今日は主人が飲み会で。今から電車乗ると混んでるし、一人分の晩御飯作るの面倒だしどこかで食事して、時間調整してから帰ろうかと思います。だから心配いらないですよ」
にっこり笑いながら言うと森本も安心したようだ。
「じゃあ、一緒に食べに行くか!」

即座に、美沙が遮った。
「いやいや。森本さん。まだ今週分の集計書できてないですよ。今日中に仕上げてください」
強めに言うと森本はちょっと肩をすくめ、手をひらひらさせた。
「しょうがねーなー。がんばりまーす」


森本はもうじき定年というベテランさんだが、お茶目で皆から慕われている。
商品知識は誰も敵わないので、定年でいなくなると打撃だなと思っていたが、定年後も契約社員として勤務が先日決まった。
とりあえず、あと1年は安泰だ。
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