大人の関係
エレベータを降りたところで、車のそばに人影を見つける。

慌ててキーを取り出し、キーレスで開錠した。

ガシャ という音が聞こえ、こちらに気付いた長野が軽く手を振る。
先ほどのスーツ姿から、カジュアルな雰囲気に変わっていた。


早足で長野に近づき
「ごめんなさい。遅くなっちゃいましたね。お待たせしました」
「いや。ホントにちょうど今来たところだから」

すぐに美沙の手にある荷物を受け取る。
「ありがとう。重かったね」
「大丈夫でしたよ」
「ああ、寒いから座ってて」

助手席に乗っていいのか悩んだが、長野が後部座席に荷物を置いているのを見て助手席に座る。
コートは脱いで乗ったが、マフラーを口元までぐるぐる巻きにして座った。

それを見て長野は笑いながら、
「気遣わせて悪いね」
もちろん美沙を知っている人が見れば、きっとこれでも気付くだろうが。
気休めだが何もしないでいることはできなかった。


高速に入って、流れに乗ったところでマフラーを外す。
息苦しさから解放され、ほっと息をつく。
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