たべちゃいたいほど、恋してる。②




しかし恋愛中の乙女フィルターというのは恐ろしいもので。

この距離まで近付いても龍之介の変化には一切気付かない。


恋は盲目、愛は全力である。


耳かして、と擦れた声で頼まれれば優衣は何も疑うことなく素直に龍之介のもとへと耳を寄せた。


優衣の見えないところでニヤリと彼の唇が動く。

それは楽しそうに弧を描いていて。

全てが、龍之介の思惑どおり。


そして、すっと小さく息を吸うと唇が空気に揺れた。




「…優衣がキスしてくれたら元気になる」


「!?」




耳元で低く、低く色気混じりに囁かれた言葉。それに優衣は目を見開く。

バッと勢いよく龍之介から体を離せば、そこにはにっこりと笑っている龍之介がいて。


その笑顔の胡散臭いこと。




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