たべちゃいたいほど、恋してる。②
それがわかったときの龍之介の形相といったらない。
それはもう狼なんて可愛いものではなく、その様はまるで鬼。
駄々を捏ねた健の兄を射殺さんとばかりに鋭く睨んでいた。
そんな龍之介を健が必死に宥め何とかその場を収めたのは記憶に新しい。
花火大会の会場で一人を避けるように歩く先々に道が出来たのは今年が初めてだろう。
それでも龍之介と初めて過ごす夏休みというだけで、優衣にとっては全てがキラキラしていたのだが。
「…どこでもいいの?」
だが、やはり女の子だ。
二人きりで出掛けたい気持ちもある。
ここ最近は優衣の引っ越しや天候も味方せず、どこかに遊びに行くことが出来ない日々が続いていた。