たべちゃいたいほど、恋してる。②
《初めての夏休み》
太陽がこの上なくその存在を主張する八月も後半戦に差し掛かった頃。
龍之介と優衣はその日、龍之介の部屋で夏休みの課題を広げていた。
ほんの少しの照れ臭さを滲ませて。
今年の夏休みはいつもと少しだけ違う。
二人が恋人同士になって初めて迎えた特別な夏だ。
「んー!やっと終わったぁー!」
「…あんのハゲ…レポートとか、無駄にめんどくせぇ課題出しやがって…!」
ぐっと両手を上にあげ、固まっていた体を伸ばし笑顔になる優衣。
それとは対照的に、眉間にしわを深く刻み机にうなだれる龍之介。
机の上に放り出された何枚ものレポート用紙には、びっしりと文字が敷き詰められている。
そして床には大量に積み上げられた本の山。