たべちゃいたいほど、恋してる。②
聞き覚えのない名前と記憶にない彼の顔に、優衣は不思議そうに首を傾げる。
そしてキョロキョロと二人の顔を交互に見上げた。
そんな優衣の視線に気付いたのか、新藤と呼ばれた彼は夏希へ向けていた体と顔の向きをくるりと優衣の方へ戻す。
夏希よりも僅かに背の高い新藤。
男としてそれほど大きいわけではないが、小さな優衣はその姿を見上げなくてはならない。
その先では短い黒髪が風にゆらゆらとしている。
新藤は自分を見上げる優衣と視線を合わせると、ニカッと太陽のように笑った。
「俺、隣のクラスの新藤渉<シンドウ ワタル>っていいます。高野とは去年同じ委員会だったんだ」
よろしくといって差し出された手に、優衣も慌てて右手を出す。