たべちゃいたいほど、恋してる。②
人懐っこい笑顔の新藤は、人を寄せ付けない龍之介とは一見正反対の存在に見える。
どちらかというと似ているのは健の方だ。
きっと彼を知る誰に聞いても二人は全く違うと答えるだろう。
しかし、優衣には店へと戻っていったその後ろ姿が龍之介の姿と重なって見えて。
残像に、胸の奥が疼いた。
(龍くんに、会いたいな)
帰ったら一番に電話しよう。
そしてもう一度欲しいものがないか聞いてみよう。
そう心に決めて、優衣は夏希と並んで歩きながら帰路についた。
新藤が二人を追ってきた本当の理由を知らないまま。
二人は気付いていない。
駆け出したはずの新藤が振り返って二人の姿を見ていたことを。
夏、恋が少しずつ動いていく。