たべちゃいたいほど、恋してる。②




「…井上…」




その姿に思わず眉を寄せたのは、最早反射条件しか言いようがない。

声が低くなるのも自然現象だ。


龍之介の目に井上の姿は完全に敵として映っているのだから。


しかし、今目の前にいる井上に若干の違和感を感じているのもまた事実だった。


別に見た目が変化したわけではない。

何かを持っているわけではない。


ただ、何かが最後に見た彼女と違う気がして。

龍之介はじっとその姿を見つめた。




(…俺と同じ目…?)




そして気付いたその眼差し。


そう。あれほどまでに二人の関係を壊そうとしていたはずの井上は、何故か龍之介かするのと同じ目をしていた。


あの、龍之介が悪童と呼ばれる理由である目を。




< 55 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop