たべちゃいたいほど、恋してる。②
ギッとまるで汚いものでも見るかのように強く龍之介を睨み付けてくる井上の瞳。
あまりに強いその目力に、龍之介は思わず一歩引いてしまいそうになる。
彼女の雰囲気にふとある身近な女の姿が思い浮かんだ。
(…こんな女だったか?)
龍之介の記憶にある井上春奈という女のイメージは二つ。
一つは中学時代、優衣に似た雰囲気を持っていた頃の彼女。
もう一つはどちらかというと妖艶な、所謂女らしい印象だ。
例え牙を剥いたとしても、それは(良くも悪くも)女の部分を見せつけるようなものだったはず。
少なくとも龍之介に対して一対一で張り合おうとするようなタイプではなかったはずだ。
もっとも、龍之介に物申す女などそうそういないのだが。