コンタクト
1章.プロローグ
//3月30日(木)7時12分:有馬家//

不愉快な目覚めだった。
昨日、家に帰った後、そのまま布団に入り、気づけば朝になっていた。
服は私服で...寝間着を着ていない。
コンタクトを付けたままで、目が痛いし、左足だけ靴下を履いて、右足は裸足だ。
アンバランスな温かさが原因とも言える...

僕は布団から起き上がり、目覚まし時計を探した。
たいてい、勉強机に置くようにしてある。
目覚まし時計を見つけて、時刻を確認...

時刻は7時12分...

いつもなら
急いで顔を洗い...
急いで着替えて...
急いで朝食をして...
急いで学校へ登校...
それが僕の日常だけど、今は春休み

僕は今年で高校2年生になる。
高校1年生になる前の不安とか、高校3年生が経験する受験とは無関係な...
強いて言うなら、人生で一番自由な(?)時間を過ごしているに違いないだろう。

「鈴、起きてる...???」

扉の向こうで、僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「うん、起きてる...」

まだ、起きたばかりで頭がまわらない。
適当な返事をした。

「お母さん、仕事に行くからね。朝食はキッチンのとこ...帰りは9時過ぎだから、夕食は何か買って食べて...」

母さんは僕の返事を聞くことなく、リビングへ戻っていった。

「わかった」

誰かが聞いているわけでもないのに、
僕は小さく返事を返した。
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