秘め事は教卓の下で
ダメだ、私…先生の事…
卒業して忘れられた筈だったのに、あの頃の気持ちが溢れ出しそうで、はしゃぐ彼の後ろで、私は思わず俯いた。
この気持ちを彼に知られたらいけない。
「みゆき、どーした?」
彼がそう口にした時。携帯が音をたて、彼は申し訳なさそうに、携帯を手に教室をあとにした。
小さくなる彼の足音に、先生は此方に振り返る。
「驚いたよ、綺麗になったな」
先生にふと顔を覗きこまれ、私は真っ赤になった顔を慌てて逸らす。
けれど、大きな手が私の頬を捕らえ、その視線は真っ直ぐ先生に向けられた。
「だけど、よく見ると変わってない。俺を見るその瞳とか、触れたくなるその唇…」
「せ、先生…ダメ…」
触れられた唇に、熱を帯びる。
頭がクラクラする。身体中が熱くなる。
ずっと求めていたその大きな手。
だけど今は彼がいる。
「そんな顔で言われても説得力ないな」
見透かされているように、先生は甘いキスで唇を奪う。
仄かに香る煙草の匂いに、私の意識は吹っ飛びそうで、思わずきゅっと瞼を閉じた。
戻って来た彼の足音に、私達は教卓の下に身を潜め、何度もキスを重ねる。
「ずっと俺のモノにしたかった」
――それは私と先生だけの秘め事。
[完]