Last flower【執筆中】
14.
それからの一週間、この小さな施設の中は、とても騒がしくなった。

ポンの誕生祝いの為にボール紙や折り紙を使って、食堂に飾るものを作る子、
紙粘土でマトリョーシカを作る子、砂絵を作る子…

拙いけれど、それぞれがそれなりに素敵なものを作る事に感心した。

「みんな、手が器用なのかな。あんまりヒドいもの作ってる子っていないよね」

「うん…それだけ、ここでの生活に慣れてるからっていうのもあるかもね」

少し苦そうに笑いながら、ユルカは答えた。

そういう自分達は毎日毎日苦戦しながら、窓の飾りに使う花を作り、貝殻をカラフルに塗った。

今は、プレゼント用のTシャツを作ろうと相談している最中だ。

チャルはそんな彼女達を横目でちらと眺めたり、マットな水色の爪をした細い指に煙草をはさんで、

何かを作る様子もなく部屋の窓の向こうを見たりしていた。

「ポン、ちょっとこっち来て」

俄かに自分がスターになったような気分なのだろうか。

初めて出会った時に見せた卑屈な笑いとは違う、どこか優越感を漂わせるような表情をして近づいて来た。

メジャーで彼のサイズを測る。近づくと、ぷんと嫌な臭いがした。

きっと虫歯のせい。カスカは思わず何度か顔をそむけ息を整え、ユルカと協力し合いながら、測定を行った。

「何色のシャツがいい?」

ユルカがポンを振り仰ぎ尋ねると、「ミドリ色!かっこいいやつ」との答えが返って来た。

「カイ君が、着てるみたいなやつ」

「?」

双子達が顔を見合わせて黙っていたら、

「こないだ、スプーン取って来てたでしョ。あの、編み物ばっかしてるやつ。カイって言うのよ」

傍に落ちた灰をつまんでは灰皿に捨て、チャルが答えた。

そしてもう一度、双子は改めて顔を見合わせー。

「…ミドリのシャツ着てるとこ、見たことある?」

「ううん。まだない」

「私も」

「…………」

少しの沈黙の後、思い切ってカスカは言った。

「見せてもらいに行こうか?」

「うん。できたら、お手本にするために借してもらおう」

すぐに話は決まった。二人はポンが案内してくれた部屋のドアをノックした。

カスカはまたあの食事の時のように、なんとなく胸がざわついた。
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