Last flower【執筆中】
やがて夕闇が迫り、お客もずいぶんと疎らになってきた。

カスカ達以外の出店もなかなかの盛況であったようだ。皆、笑顔で店の片付けをし始めている。

「チャルは…結局見つからなかったんだね」

「うん…」

アンコのことも、一体あれはどういう事なのかmotherに聞かなければならないと双子は思った。その時。

「おーい。チャル、いたよ。ドロドロ川のとこ」

カイに連れられてやって来たスイムが、当たり前のように双子に伝えた。

「探してたんでしョ?」

頷いた双子はドロドロ川へと向かった。カイとスイムも、ついて来た。

「チャル、どうしたの?」

茶色いバッグに座ったまま、膝を抱えて俯いていたチャルは、

カスカ達の問いかけにも答えずジッと身動きもしなかった。

「具合、悪いの?」

「何があったの?」

どんな呼びかけにもチャルは反応しなかった。

後は数分、全員が黙った。黙ったまま、今日も艶めいて美しいチャルの髪を見下ろしていた。

と、ふいにチャルは顔を上げた。涙でメイクが溶けかかっている。

「いーから、放っておいて。暫く経ったら部屋戻るし。一人にして」

思いがけず、力強く言い放った。「でも」とユルカがチャルの細い肩に触れるとそれをも強く振りほどき、

「いいから構うな!!」

叫びにも似た声で、それを拒絶した。そして

「『読む』なよ、スイム」

今度は声を低くして、スイムをキッと見上げた。

スイムは「ああ」と短く返事をして、踵を返した。

それにつられるように全員がドロドロ川のほとりにチャルを残して去った。

足音が遠ざかった後、ぴちょぴちょと揺れる川面に向かいチャルは、

薬指から抜き取った指輪を放り投げ、声を出さず泣いた。
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