ある2人のある日常的なバレンタインの1日
モーレ・ネグロ
「ぬぅ……」
僕はキッチンで料理をする師匠の背中を見つめながら、唇を尖らせてみる。
今朝から、僕のやることなすこと空回りだった。
朝一番に師匠に差し出した花束は「花瓶」と一言で済まされてしまった。
とりあえず花瓶に生けておいた。
昼食は僕が作ります、と腕によりをかけて作った料理は焦げたり生焼けだったり……お皿は三枚も割ってしまった。
師匠の作ってくれた冷製パスタは美味しかったけれど。
渡そうと作って隠しておいたメッセージカードは、調理中に火を噴いたフライパンに燃やされて灰になった。
僕があたふたしている間に師匠がフライパンに水をかけて鎮火していた。手慣れている。
ーー空回りし続け、今に至る。