背徳の××
確かにそれは面白いけれど、入試には出てこないぞ、なんて岸田くんを小突く。
瞬間、私の手首が岸田くんに掴まれる。
「え?」
「斎藤さん、」
岸田くんは私の手に視線を落として、言いにくそうに口を開いた。
「結婚? それとも、婚約?」
ずきりと胸が痛む。
私は、指にはめられたものをぼんやりと眺めていた。
「ねえ」
岸田くんの声は、心なしかイライラしていた。
そのイライラに比例するように私の心の中に、何か黒いものが広がっていく。