背徳の××
「これ、彼氏にもらったの。婚約、ってことになるのかな」
表情に曇りがでないように、私の気持ちがバレないように。
だって、それが一番都合がいいじゃない。
一番誰も傷付かなくてすむじゃない。
「斎藤さん……!」
岸田くんと私の間には確かにカウンターがあったはずなのに、その距離が嘘みたいに縮まる。
岸田くんの切羽詰まったような、余裕のない表情なんて今まで見たことがなくて。茫然と顔が近づいてくるのを眺めていた。