恋の訪れ
「無理です、あたし!!ってか別にこの後のご飯なんていいですから!」
「うーん…でも、もう決めちゃったしね。真理子ちゃんも莉音ちゃん連れて食べに行くって言ってたよ」
「はいっ!?いやいや、それに香澄先輩も嫌ですよね?」
なんて言ったのに。
「うーん…別にいいよ。今日は暇だしね」
「ほらほら香澄もいいって言ってるし。それに莉音ちゃんのパートナー昴だから!手助けしてもらったらいいだろ」
そう言いながら笑ってるサクヤ先輩と香澄さんがほんとにムカツク。
「サクヤ、お前調子に乗り過ぎ。俺もパス!」
昴先輩はゲンナリとした声で、足を進めた…んだけど。
「おーい昴!まだお前に沢山貸し作ってんだけど」
ニヤニヤ顔をさせながらサクヤ先輩はキューを肩に乗せてポンポンと楽しそうに叩く。
その直後、小さな昴先輩の舌打ちが聞こえた。
「ねぇー、貸しってなになに?気になんだけどー」
香澄先輩は興味津々にサクヤ先輩を覗き込む。
「香澄ちゃーん、そんなに気になるのかい?だったら昴様に聞くんだな」
「えー、余計気になる。昴なんなの?」
香澄先輩の視線が昴先輩に向く。
その途端、昴先輩は、
「わーった、わーった、やればいいんだろ」
さっきとは打って変わって、何故かすんなりと了解してた。
貸しってなんだろ。って言うか、それどころか、あたしやりたくないんだけど。
「えっ、何?教えてくんないの?」
「香澄には関係ねーよ」
「ひどっ!ほんとアンタは酷いね。ねー、サクヤ」
「おぅ、ひでーよ、昴は。この俺様を何年かコキ使ったからな」
「えー、だから気になるって」
「おい、サクヤ。お前、殺されて―の?」
「うおっ、こえー」
別に怯えてるわけでもなくクスクス笑うサクヤ先輩の笑みが余りにも怖くて、時折、あたしに向かってくる笑みもすごく怖かった。