恋の訪れ
仕方なく昴先輩の後を追った。
不機嫌そうに目の前を歩く先輩は両手をポケットに突っ込んでて。
「ごめんなさい…」
不意に呟いたあたしの声さえも無視された。
ほんとに、嫌い。
ほんとに昴先輩、嫌い。
なんでそんなに偉そうなの?
先輩はあの時の男の子なんでしょ?
あたしの事知ってるんでしょ?
なのに何で、そんな態度とるの?
好きな人の妹だから嫌いなの?
ねぇ、教えてよ、先輩。
「…あの、昴先輩」
不意に先輩の名を呼んでいた。
「なに?」
今度はちゃんと返事してくれたけど、後ろを振り向こうとはしない。
そんな昴先輩の背中に、
「先輩は彼女居ないんですか?」
自分でも驚くような質問をしてた。
「いねーよ」
「じゃ、好きな人は?」
「いねーって、」
「じゃ、気になる人は?」
…お姉ちゃん?
「つか、なんなのお前。何が言いたい」
立ち止まったと同時に昴先輩は振り返る。
「あ、居るんですね」
「いるって言ってねーだろ」
「じゃ何で、それだけ答えてくれないんですか?」
「マジ、うぜー…」
そう小さく呟いた先輩は、またあたしに背を向け足を進めていく。
ほら、やっぱり答えてくれない。
…お姉ちゃんが気になるから。