恋の訪れ
あぁ、また泣けてくる。
なんで先輩は言わないんだろうか。
なんで先輩はあたしに隠してるんだろうか。
結局、店に着いてもあたしは中に入らず、ずっと外の壁に背をつけて待ってた。
こんなんだったら着いてこなければよかった。なんて思いながら昴先輩が出てくるのを待ってた。
暫くして昴先輩が出て来たと同時に、
「すみません、あたし帰ります」
小さく口を開いた。
「あっそ」
昴先輩の口から出た言葉が、物凄く冷たくて、不意にあたしの頬に涙が伝った。
どうして出たのかも分かんない涙。
それとともに眩暈がする。
耳も痛い。
だから嫌なの、昴先輩と一緒に居るのは。
いつも、いつも不調になっちゃう。
なんでか知んないけど、体調が悪くなる。
だから、嫌いだよ。
「つか、なんで泣く」
「……」
また新たに涙が落ちた。
だから思わず左耳をギュッと握った。
変な違和感を感じる。
そこから頭に向かっていく、痛さに耐えられなくなり、そのまま先輩に背を向けて歩き出したけど。
「お前、どこ行く気?帰り道逆」
咄嗟に掴まれた冷たい腕が、昴先輩のぬくもりに一瞬にして変わった。