恋の訪れ
腕を掴まれたまま歩いていく昴先輩に仕方がなく着いていくしかない。
「すぐ来っから」
暫く歩いて立ち止まった先輩はそう言ってあたしの腕を離す。
見上げる場所はさっきまで遊んでいた場所で、あたしは先輩に言われた通りその場で立ち尽くしてた。
もう、帰りたいのに。
そう思ってると、先輩は自転車を押してあたしの横に立ちどまった。
「乗れよ」
「え?」
ちょっと面倒くさそうに、そういった昴先輩を見上げる。
「後ろ、乗れって」
「え、でも…」
躊躇っていると昴先輩はあたしの鞄を取って、自転車の籠の中に入れる。
「お前が泣くと面倒くせーんだよ、」
ため息を吐き捨てた先輩は、ホントに面倒くさそうに自転車に跨った。
「…ごめんなさい」
全く何であたしが面倒くさいのか分からないまま、何故か謝った。
だったら、勝手に一人で帰ればいいのに。
中途半端な優しさなんていらないのに。
何で訳わかんない優しさなんかするんだろうか。
「別に謝れとは言ってねーだろ。…早く乗れよ」
「…はい」
素直に呟いて昴先輩の後ろに座る。
あーあ、また真理子になんか言われる。
それに絶対この自転車、サクヤ先輩のんじゃん。
ほんと、嫌なんだけど。