恋の訪れ
「昴先輩っ、大丈夫ですか?」
真理子の声に、やっぱ昴先輩なんだって分かった。
どうしよう…
下ろしてって言いたいのに、目を開けたいのに磁石のように瞼が開かない。
ほんとに、気分悪い…
「真理子ちゃん?あいつを誰だと思ってんの?昴は沢山の女を抱いてきたんだから」
「えー、それってどっちのですか?」
「どっちとは?」
「抱きかかえる方か、寝る方…」
「あー、なるほどね。それはどっちも豊富―――…」
「おいっ、馬鹿言ってねーで開けろよ」
真理子とサクヤ先輩の声を怒って遮った昴先輩に声。
それに交じって、聞こえたため息。
立ち止まった昴先輩とともにガラッとドアの開く音が微かに聞こえる。
ごめんなさい。それさえも言えなくて、目も開けれなくて。
むしろ、夜中に見た昴先輩の姿が未だ信じられなくて、顔を見る事なんて出来ない。
未だに、あの光景が頭の中に焼き付いて、消し去ることも出来ない。
そしてベッドに寝かされた瞬間、あたしは意識を失う様に闇に落ちていた。