恋の訪れ
「え、だって。昴にキスされて目覚めたんだろ?」
「はいっ、!?」
凄い事を言うもんだから声が裏返ってしまった。
瞬きも忘れるくらいに目を見開いて固まってるあたしにサクヤ先輩はケラケラ笑う。
「本気にした?ま、冗談だけど」
「もー、先輩!ビックリするじゃないですかー」
バシバシ真理子はサクヤ先輩の肩を叩く。
いや、ビックリしたのはあたしのほうなんだけど。
「もう、冗談やめてくださいよ」
頬を膨らますあたしにサクヤ先輩は更に笑う。
「寝込み襲われるよりマシっしょ?まー、でも?昴は心配してたよ。出会ったら礼言っときなよ」
「あー…はい」
「じゃーね」
ヒラヒラ振ってサクヤ先輩は消えていく。
念のため、念のため確認しとこうと思って。
「ねぇ、真理子?何で昴先輩に礼な訳?」
自分の目で確かめてないから、真理子に確認したい。
分かってるけど、分かってるけど、聞きたい。
「だってー、昴先輩が莉音抱えて保健室に連れて行ったんだよ。マジやばいよねーカッコよすぎた。あんなところ見ちゃうと絶対、莉音惚れちゃうよ」
「……」
「キュンキュンって感じ?周りの女の子たちが、羨ましそうに見てたもん」
「……」
「あたしも運ばれたいーって、言ってたしさ」
「……」
「もう、あたしまでもドキドキしちゃったよー」
なんて。デレデレと話す真理子に正直、ウンザリした。
別にキュンキュンはしない。
そりゃあ、ありがとうって思うけど、惚れない。
絶対に。